SOUL INDEX

Column

2014年8月26日

“SOUL SURVEY & SOUL FREAK”から”BORDERLESS SOUL & SOUL OVER THE RACE”へ〜情報量の違いがもたらす”後追い”文化 〜

モンスターゼロ

 

歴史は繰り返すも。。。リアルタイムゆえの赤っ恥!?

Soul Music , R&B , Funk , Disco 等は今の20~30代の人達は100%後追いです。これはつまり、リアルタイムと違い圧倒的に情報量が豊富で選択の余地が広いということでもあります。その代り、リアルタイムに生きた世代が持つ「生の体験」や「その場の臨場感」については分からないはずです。(分かったら「バブルへGo!」です。)

私自身、10代後半の頃にエルヴィス・プレスリーが亡くなり1950年代ブーム、いわゆるフィフティーズ・ブームが流行った時少しハマりましたが、その時も後追いをし、圧倒的情報量の違いにリアルタイム近辺の方達に「なんでそんなこと知ってんだ?」と言われたものです。

もちろん、1974年の段階で60年代のモータウンやメンフィスサウンド、JB はすべからく後追いです(汗)。違いと言えば10年も経過していなかったことです(今となっては10年など短いと思われるかもしれません)。

後追いの良さは、先達の体験や経験が整理整頓されて資料化したものがイコール教科書になります。その中には体験や経験に加え当時でも「知識のみ」又は「極めてレアな部分」も含まれますがそれらもすべてひっくるめて後追いは学びますから、リアルタイムの方々が驚くケースが出てくるのです。

とは言いつつもあくまで後追いゆえ、隅々まで把握・網羅しているかと言えばそうはなかなか難しい!?

特に、自分の好きな範疇外にも関わらず周囲が騒いでいたりすると慌てて「仕込み」に入ったりします(笑)。。。。我々もかつてそうでした。

そんな一例が。。。。。前章で出た下北沢の老舗「フラッシュディスクランチ」さんでの一コマ!

いつもの様にエサ箱(レコードの入っている箱)を漁っていると左側に人の気配が・・・・
「なに、オレ?」と尋ねると・・・・
「ハイ、すいません。このLPって良いですか?」・・・と若い女の子!
「どれ?」と彼女の持っているLPを見ると・・・・・!!!??

KC&サンシャインバンドのセカンドアルバム・・・・そーです。「ザッツ・ザ・ウェイ」の入っているヤツです(笑)

KC-2nd

これねぇ・・・・・KCのセカンドです。

♪ ザッツ・ザ・ウェイ。。。アハアハ!♪

ディスコから飛び出し、パチンコ屋さんでも鳴り響いた ” ザッツ・ザ・ウェイ ” (笑)

私はダサい曲だなと思っていましたがバカ売れしました。

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40年後の現在、このバンドは「マイアミ・サウンドの立役者」的見方をされ、明るくてファンキー、聴くと元気になる等の好評価を得ているそうです!

「なんでオレに聞くの?」と尋ねたら・・・・

「だって、絶対この頃の人だと思ったので。」

・・・・ふざけんなよぉ(笑)と思いつつ裏面の曲名を指さし「コレとコレとコレがヒットしたよ。順番はこんな感じ。」と説明すると、彼女・・・

「やっぱ、この頃の人だぁ!」と笑いながらレジへ!・・・・・お礼くらい言いなさいよ!笑

まぁ、低次元且つ卑近な例とは言えこんな感じですね(笑)

70年代後追い世代の聖地!伝説のロックンロール喫茶 ” トンデヘレヘレ “

ここで30数年前のワタシを例に「後追い」と「リアルタイム」の違いを見てみましょう。

 

リアルタイムの大先輩方(=1950年代後半の日本)は

ロカビリーブームとくればまず真っ先に。。。。。ミッキー・カーチス/平尾昌晃/山下敬二郎(ロカビリー御三家) となります。 

ロカビリー御三家憧れの存在が。。。。。。。。。エルヴィス・プレスリー

但し、当時はエルヴィス・プレスリーも、ポール・アンカ、ニール・セダカも、デル・シャノンも、はたまたリトル・リチャード、チャック・ベリーもごちゃ混ぜでカバー!

ノリが良くて騒げれば、そして踊れればそれで良しという風潮でした。(この現象は70年代ディスコの風潮と全く同じです)

 

一方、50年代ロックンロール後追いのワタシの場合、、、

ロカビリーとロックンロールは実はビミョーに異なる音楽である。

ロカビリーは、ブラック・ロックンロールと戦前からあった白人音楽ヒルビリーの融合である。

と言うことは、ロカビリーはブラック・ロックンロールとヒルビリーの「子供」にあたる。

一方、ロックンロールはカントリー&ウエスタンと黒人のR&B(特にジャンプブルースの様なブギウギビートに乗った軽快な曲調)+αとの融合!であり作ったのは黒人!

 ≪ちなみに、サザンソウルはカントリー&ウエスタンと黒人のブルースの融合≫

そして、黒人によるR&Rに白人の若者が食いつき大ブーム(悪魔の音楽と揶揄された)!

こーなれば、白人アーチストも黙っちゃいない?!

エルヴィス・プレスリー、ジェリー・リー・ルイス、カール・パーキンス、ジーン・ヴィンセント、エディ・コクランと言った白人ロックンローラーがこぞってデビューし、みな大ヒットを飛ばす!

彼らの中にはオリジナル曲もありますが、カバー曲も多かった。。。。それらのオリジネイターが、リトル・リチャード、チャック・ベリー、ボ・ディドリーやファッツ・ドミノ達でした。

(60年代半ばのビートルズやローリング・ストーンズらイギリス勢もこの人達を憧れの存在としてカバーし、リスペクトしていたことも知り得ました。)

一般的には、ロックンロールと言う言葉で一括りされていましたが評論家達は、白人の方を「ホワイト・ロックンロール」、黒人の方を「ブラック・ロックンロール」と呼び分ける様になります。

またホワイト・ロックンロールでもヒルビリー色の強い曲をロカビリーの範疇に入れたりもしています。(完全な棲み分けは困難)

50年代がリアルタイムなロックンロールの世界が、20年近くを経た70年代後半のリバイバル・ブームの中、後追いとしてこれらの音楽やアーチストに興味を持ち、曲を聴き、本を読み漁った結果分かったことです。 好きになり、調べれば調べるほど、黒人のポピュラー音楽における功績の偉大さをより大きく感じる様になりました。

更に、50年代ブラックR&Rを知ることで、シカゴ・ブルースの入口にもたどり着くことが出来たり(チェス・レコードを知る事で)、「ブルース全般」にも触手が伸びライトニン・ホプキンスもBBキングも知り得る様になります。

70年代後半のリバイバルブームのキッカケの1つが映画「アメリカン・グラフィティ」のリバイバル上映でした。特にこの「アメグラ」でハマり、「ドゥワップ・ヴォーカルグループ」に突き進んでいった人も結構います。

ロックンロールを白と黒に分けること自体リアルタイムには無縁な話だったのが、後追いになると情報量が増えた分だけ、リアルタイムでのブームと後追いでのブームで捉え方がずいぶんと変わっていますね。

ついでですのでここで少々ブラック・ロックンロールをご紹介。

Little Richard-1st
Beryy is on top
Bo-1st

上から、リトル・リチャードのファースト・アルバム。チャック・ベリー御大の三枚目、ボ・ディドリーのファースト・アルバム。圧巻の御三方、ここにファッツ・ドミノを加えると四天王ですね! 皆さん、ミスター・ブラック・ロックンロール。

古典と言うか、歴史の教科書と言うか!(笑)このあたりをあらためて聴くとどれも「ベストアルバム」状態、イコール当時いかにシングル盤中心の販売展開だったかがうかがえます。

上記のような例の他にも、世代・時代的にリアルタイムでも当時関わっていなかったものを後になって追いかけることもあります。 成長している分、理解力や分析力も長けてきているのでまた違った聴き方が出来ることが面白い場合もあります。

そんな50年代への後追いに夢中だった浪人時代、一件の喫茶店と出会いました。

書いているだけで涙が出そうなそのお店は、予備校街だった高田馬場にありました。関西出身のご夫婦が切り盛りしていたそのお店の名前は。。。。。。。。。。。。

トンデヘレヘレ。。。。。!なんじゃそりゃぁ?とお思いでしょう(笑)

通称「トンヘレ」と呼ばれていたそのお店、確か5年くらいの営業期間だったと思いますが、今ではビル街になってしまった新宿よりの小さくて低い山手線のガード近くにありました。ちなみに、「トンデヘレヘレ」とは元祖ブルー・アイド・ソウルと言えそうな50~60年代にかけて活躍したイタリア系白人アーチストのディオンが大ヒットさせた名曲 ” Runaround Sue ” 邦題を「浮気なスー」のバックコーラス部分から取っています。

モーニングが500円(1977年当時としては意外に高め)、ピラフが自慢で生米からブイヨンで炊く本格派!ピリピリピラフ・ピョンピョンピラフ・あともう1つが思い出せない。。。。笑

場所柄、予備校生や早稲田大学の学生さん達が多かった気がします。また当時はまだこの様なお店が少なかったせいか、評論家の方などもみえていらしたようです。

Tonhere-2 (2)
見つけました、トンデヘレヘレのマッチです!

Tonhere-2 (1)

マッチの裏面。場所分かりますか?
何せ今から37年くらい前ですので。。。。(汗)

このお店のマスターから、アメリカのレコードディーラーからリストを取り寄せ、セットセールやオークションのやり方を教わりました。マスターはディオンが好きで他にもホットロッド系の曲がお気に入りだったはずです。浪人中にも関わらず友人達と屯してタバコをプカプカ吸いながら(マイルドセブン120円!)あーだこーだと音楽談義に花を咲かしていました。(勉強せーよ!)

Runaround Sue

今の若い人にも、聴いてほしいですね!

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マスターに教わった中で一番のお気に入りが↓
Don & Dewey
爆裂デュオ、ドン&デューイ!これ懐かしい!
リトル・リチャードと同じレーベルでした。

ライチャス・ブラザーズもカバーした ” Justine ”
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なおこちらのマスター、60年代に青春を迎えた世代ゆえジェームス・ブラウンの曲でカッコよく踊る姿を拝見しブッたまげたことがありました!

 

若い SOUL FREAK 達にお願いしたいこと

いずれにせよ、世代も時代も超越して SOUL MUSIC を万国共通 & OVER THE RACE の良質音楽として広めていければこれに勝る至福はありません! 

但し。。。。 

ソウルミュージックをボーダーレスで広げていくならばオリジナルへの 回帰と畏敬の念を、聴く人に分け与えるのも大切な役割の1つだと思います 

ここは外せないのではと思います。

良質のものとして提供していくならば、提供側が「オリジナル」に対する真摯な気持ちを 持つことこそ必須だと思います。

カバーも、アレンジも、独自解釈もすべてオリジナルがあってこそなし得ることです。

そのことを提供者が分かっていれば、受け取る側がオリジナルを知らなくても安心だと思います。

半世紀を超える SOUL の歴史を考えると、カバー、孫カバー、ひ孫カバーが生まれてくるのは当然です。悪いことではないですが、一体オリジナルって???
これをどうでもよいことと考え始めたら
SOUL MUSICの寿命はカウントダウンになってしまいます。

黒人独特の声、リズム、ダンス等が肌の色を超え若い人を中心に広まっていった中で、徐々に洗練され誰もが聴き易く、踊り易く、親しみ易いスタイルに変化して現在に至っています。

現在の、ネオソウルやコンテンポラリーR&Bのルーツはおおむね1970年代後半の楽曲がメインと言って良いと思いますがこの時期がルーツでないことは明白であり、70年代後半に脚光を浴びたアーチストのほとんどが50~60年代のスタイルやアーチストから多くの影響を受けています。

但し、この頃のアーチスト達と50~60年代のアーチスト達との違いを挙げれば前者は他のジャンルとの組み合わせや融合を躊躇なく行ったということだと思います。時代背景が要因にあることは当然ながら、肌の色等関係なく良いものや好きなものはどんどん自分の音楽に取り入れる。。。。この姿勢が21世紀に入っても連綿と続いている証しだと思います。

2010年代と1950年代の楽曲を連続してプレイすれば余りの違いに驚くのは当然ですが、その歴然とした違いの「間」にどれだけの「人・モノ・カネ・情報、そして気付き」が隠されているかを理解した上で、これからの「若い人たち」に伝えていくのが「今の若い SOUL FREAK 諸兄」にお願いしたいことです。

今の後追い世代の強み ⇒ 膨大な資料/莫大な選択肢/インターネットと言う革命的なツール
今こそ活かしてください!。。。。。かつての我々の様に!(インターネットはなかったけれど)