皆さんは彼をご存知だろうか?
今や来日公演も毎年恒例のこととなった、現在のソウルミュージックシーンを代表するシンガー、エリック・ベネイだ。
日本でも高い人気を誇るエリック。USENのR&Bチャンネルで彼の声を聴く機会も多い。ご存知でなかった皆さんも、きっと街のどこかで彼の声を耳にしたことがあるハズだ。
甘く豊かなファルセット・ヴォイス。Gospelをルーツに持ちJazzのフィールも取り入れた耳なじみのいいお洒落で洗練された楽曲たち。毎年恒例のBlue Note Tokyo での彼のライブは、いつも彼の魅力に虜にされた女性ファンで一杯だ。
そんな、女性たちを虜にする甘いラヴ・ソングももちろん彼の重要な持ち味なのだが、彼の歌には、単なる愛の言葉の羅列に留まらない深い説得力がこもっている。
ではその説得力の正体はなんなのか。彼の歩んだ人生の一部と、その中で作られた一つのアルバムの中の数曲を抜粋し、皆さんにも彼の歌に露われる本物のSoulを感じて頂きたい。
エリックの半生:デビューから活動休止へ
17年のキャリアを持つエリックだが、実は長い休止期間もあった。
1994年にワーナー・ブラザーズ・レコードと契約し、1996年にTrue to Myselfでソロ・デビューし、高い評価を得る。1999年にセカンド・アルバムA Day in the Lifeを発表し、フェイス・エヴァンスをフィーチュアしたファースト・シングル”Georgy Porgy”(トトのカバー曲)も発表。タミアをフィーチュアしたセカンド・シングル”Spend My Life With You”を発表、2000年のグラミー賞にノミネートした。
1999年に女優のハル・ベリーと婚約、2001年1月に結婚する。
2002年にアルバム、Better & Betterを完成させたもののワーナーブラザーズの意向により、発売されることはなかった。
出典:Wikipedia
ハリウッド女優との結婚と不倫のスキャンダルから、音楽業界から干されてしまう様な状況に追いやられたのだ。新しい作品を世に出すまでに、さらに3年の沈黙を余儀なくされた。
再生:”Hurricane”
そしてほとぼりも冷めた2005年、万を持して発表された彼の3rdアルバムのタイトルが “Hurricane” 。
1曲目のタイトルが “Be Myself Again” 。もう一度、自分のスタイルを忘れて道に迷ってしまったけれども、何者にも惑わされず自分自信を取り戻すという決意が、しかし明るく表現されている。
そしてタイトル・チューンである”Hurricane”。繰り返されるサビでは、ハリケーンでしか心の痛みを洗い流すことができないこともある。と歌っている。妻の死、女優との結婚、不倫、そして離婚。それらが積み重なり凝り固まってしまった彼の痛みをストレートに表現している。そしてそれらの痛みや逆境を見つめ、優しく押し上げる力が込められている様に思う。
いかがだったろうか。
彼の歌に感じるSoul Musicの根源。逆境を見つめ優しく上に持ち上げてくれる力を、是非多くの人に感じて欲しい。