昨今、R&Bが熱いだとか、Soul Musicをベースにした楽曲がどうのだとか良く耳にする。
しかしいざSoul Musicを聴いてみよう!と思っても、いざとなると何から手を付けていいか分からない、という方も多いはず。そこで今回はそんな迷える音楽好きにおすすめ出来る、しかしディープなSoul好きも納得出来る一枚をご紹介したい。
まずは以下の写真を見て欲しい。
ファンだけでなく、多くのミュージシャンからも絶大な支持を集めた、80年代ブラック・コンテンポラリーを代表するシンガー、ルーサー・ヴァンドロスだ。
ルーサー・ヴァンドロスとは・・・
1951年4月20日、ブロンクスに生まれたルーサーは70年代、バックコーラスとして多くのレコーディングに参加した後、シック(Chic)の作品への参加や、ラウンドツリー(Roundtree)、チェンジ(Change)、チャーム(the Charm)などとのセッション・シンガーとして活躍。その実力に高い評価を得て81年にデビューアルバム”Never Too Much”をリリース。いまだに人気のタイトル曲やバラード”House is not a Home”などHIPHOPネタとしてもおなじみの楽曲を収録した同盤は、R&Bチャートで1位を獲得、200万枚を売り上げ一躍トップスターの仲間入りを果たした。その後も”Forever, for Always, for Love”(1982)、”Busy Body (1983)”、”The Night I Fell in Love”(1985)、”Give Me the Reason”(1986)、”Any Love”(1988)、”Power of Love”(1991)とリリースしたアルバムが全て100万枚を超えるセールスを記録するという快挙を達成している。
そんな輝かしいセールスを誇るルーサーのアルバムもどれも素晴らしいのだが、今回皆さんに紹介したいのは上記のような彼のアルバムというわけではない。
ルーサーは最後にリリースされたアルバム、”Dance With My Father” の製作中に脳卒中で倒れ、その2年後に54歳の若さで急逝している。そのわずか80日後、ルーサーの死を悼んで集まった多くの素晴らしいミュージシャンたちが、彼に捧げて作った一枚のアルバムがある。
それが今回ご紹介したい、”So Amazing: An All-Star Tribute to Luther Vandross” である。
So Amazing: An All-Star Tribute to Luther Vandross
1. Mary J Blige “Never Too Much”
2. Usher ”Superstar”
3. Fantasia “Til My Baby Comes Home”
4. Beyonce & Stevie Wonder “So Amazing”
5. Aretha Franklin ”A House Is Not A Home”
6. Donna Summer “Power of Love”
7. Alicia Keys (feat Jermaine Paul) “If This World Were Mine”
8. Elton John & Luther Vandross “Anyone Who Had A Heart”
9. Celine Dion “Dance With My Father”
10. Wyclef Jean “Always & Forever”
11. Babyface “If Only For One Night”
12. Patti Labelle “Here & Now”
13. John Legend “Love Won’t Let Me Wait”
14. Angie Stone “Since I Lost My Baby”
15. Jamie Foxx “Creepin”
ルーサーが生前綴ってきた珠玉の名曲達を、15曲で全18名ものシンガーが個性豊かにカバーしている。現在のソウル・ミュージック・シーンを代表するシンガーや、Legendと呼ばれる様な大御所などの目白押し。一枚で彼らにそれぞれ触れられるということが、このアルバムをお勧めする最大の理由である。
この手のコンピレーション・アルバムは、新しいジャンルを開拓したい場合に役に立つことが多い。1枚で多くのアーティストに触れ、自分にあったものを見つけ、深めていく。
特にこのアルバムは、外れナシと言っていい程それぞれの楽曲の完成度が高い。これからSoul Musicに触れたいけれど、何から聞いたらいいかわからないという方にはうってつけだ。
いくつかピックアップしてゆく。

タイトル・チューンのSo Amazing。あのビヨンセとスティーヴィーによる超豪華なデュエットで、愛すること、愛することの素晴らしさが繊細に歌い上げられている。スティーヴィーの声と、原曲にはないおなじみのハーモニカが、プラトニックな雰囲気を紡ぎだしている。ビヨンセの豊かな声も素晴らしい。ビヨンセといえばダンス・チューンのみというイメージに縛られ、いわゆる”聞かず嫌い”になっている方には是非聞いて頂きたい。

ルーサー最後のアルバムのタイトル・チューンを、世界の歌姫セリーヌ・ディオンがカバーしている。彼女はジャンル的にはPops Singerであるが、ジャンルを超えて非常に素晴らしい歌声を聴かせてくれているので紹介させて頂きたい。
ルーサーが、早くにその伴侶を亡くした母を思い書いた曲。彼女にもう一度、父と踊らせてあげたい。そんな純粋な思いが歌われている。原曲は打ち込みにベースとピアノだけとシンプルなバッキングだが、セリーヌはギターやストリングスを使い、壮大に歌い上げている。

Lady Soul アレサ・フランクリンによるカバー。ルーサーとは公私共に親しかったようである。彼のプロデュースによるアレサのアルバム、”Jump To It”は、アレサの第二のピークを代表する作品となっている。この曲はひねることなくストレートに、原曲の良さを表現している。
上記の他にも、パティ・ラベル、ジョン・レジェンドにアリシア・キーズなど、皆さんにも耳なじみがあるであろうビッグ・ネームぞろい。まだ手に取ったことのないあなたはこの機会に是非ルーサーの世界と素晴らしいシンガー達に触れて頂きたい。
おまけ

ホイットニー・ヒューストンがルーサーの死を悼み行ったスピーチ。ルーサーの曲への言及もある。これからも、いかに彼が多くのミュージシャンに愛されていたかが良くわかる。