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Matome Article

2016年4月21日

今改めて考えたい、音楽界の《Black Lives Matter》ムーヴメントについて

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本日のSOUL iNDEXでは、この数年アメリカの音楽シーンで改めて大きく注目されることとなった《Black Lives Matter》ムーヴメント及びそれにまつわる作品をご紹介します。

 

未だ根強いアフリカン・アメリカンを取り巻く人種問題について、様々なアーティストが音楽を通して表明した想いをぜひ今一度受け止めてみてください。

 

それでは早速参りましょう!

 

 

《Black Lives Matter》って?

Black-lives-matter

《Black Lives Matter》とはアフリカン・アメリカンを取り巻く人種問題が顕在化していくなかで勃発した〈新たな公民権運動〉のこと。

 

2014年7月のニューヨーク、8月のミズーリ州ファーガソンにて、無抵抗の黒人男性が相次いで白人警官に殺害されるという残酷な事件が起こりました。

それがいずれも不起訴処分になったことで大きな社会問題となり、そうした状況に抗議するためにスローガンとして使われた言葉が、”Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)”です。

 

様々な人々がこの件について声を尽くしていく中、音楽界でもこれに関連した動きが活発化。

近年《Black Lives Matter》をテーマとした楽曲/アルバムが多くリリースされるようになっています。

 

 

Kendrick Lamar – 「i」

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ということでまずはじめにご紹介するのは今年のグラミー賞で最多となる5冠を達成し今最も注目されるカリフォルニア州コンプトン出身のラッパー・Kendrick Lamar

彼が2014年に発表した”i“には、黒人に団結を促すと同時に、ブラックパワームーヴメントのスローガン”Black is Beautiful”に通ずるような「まず自分を愛そう。そうしなくちゃ、他人も愛せない」といったメッセージが込められています。

 

この曲が収録された大ヒットアルバム『To Pimp A Butterfly』にはそうした数々の人種問題に関するメッセージが巧みに練り込まれています。

狂気的とさえ言える強い怒りに満ちたアルバムですが、それをこんなにも魅力的な芸術作品に仕上げ世界中を魅了してしまうあたりは流石の一言。

 

 

Beyonce – 「Formation」

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続いては今年のスーパーボウル・ハーフタイム・ショーにて初披露され話題を呼んだBeyonceの”Formation“。

この曲は自立した女性像を描くと同時に、自身の出自や人種的ルーツを語りながら「ブラックであること」に誇りを感じていることを伝える《Black Lives Matter》色の強いナンバーとなっています。

 

開催された2月が『Black History Month(黒人歴史月間)』だったことも、お披露目の舞台にハーフタイム・ショーが選ばれた理由のひとつだったとか。

 

バックダンサーたちは黒人民族主義運動・黒人解放闘争を行っていたブラックパンサー党を意識した衣装に身を包んでパフォーマンスを行い、世界中が注目するこのショーのメッセージ性をさらに高めました。
(ちなみにBeyonce自身は1993年のハーフタイム・ショーでのMichael Jacksonのステージ衣装を思わせる格好で登場)

 

 

Gregory Porter – 「1960 What?」

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《Black Lives Matter》ムーヴメントが本格化する少し前、2010年に発表されたジャズシンガー・Gregory Porterの”1960 What?“もまた、この流れの中でぜひとも触れておきたい一曲。

 

キング牧師の暗殺や黒人暴動といった60年代の事件に触れながら、サビで「モーター・シティ(デトロイト)は燃えている」と連呼するこの曲は、公民権運動を振り返ると同時にこのムーブメントの予兆となるものであったと言えるでしょう。

 

強く訴えかけるようなヴォーカルに心を揺さぶられます。

 

 

Common, Lalah Hathaway – 「We Are Young Gifted & Black」

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Robert GlasperMs.Lauryn Hillがそろってエグゼクティヴ・プロデューサーを務め(とは言え実際には双方の主導パートを組み合わせた構成になっているので両者の直接的な絡みはないんですが)、多くの大物アーティストが参加した豪華トリビュートアルバム『Nina Revisited… A Tribute To Nina Simone』。

この作品もまた、昨今のブラック・ピープルをとりまく状況や、それに対する《Black Lives Matter》ムーヴメントが絡んだものとして知られています。

 

Nina Simoneと言えば、かつて教会爆破事件に対して”Mississippi Goddam“で抗議し、1969年には黒人讃歌”(To Be)Young, Gifted And Black“を残すなど、公民権運動の時代から同胞たちを代弁する闘士として支持された人物。

 

同曲をカヴァーしたCommonLalah Hathawayのパフォーマンスからも、その並々ならぬ思いの丈を聴くことができます。

 

 

Common, John Legend – 「Glory」

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さてそんなCommonJohn Legendの共作となった”Glory“。
この曲はMartin Luther Jr.(=キング牧師)の伝記映画『Selma』の主題歌としてゴールデングローブ主題歌賞も受賞している楽曲で、同年のグラミー授賞式でも式の大トリを飾り大きな話題となりました。

 

キング牧師についてだけでなく、過去と現在における黒人の人種差別の戦いに関する歴史をつなぐような内容の歌詞で、さらにファーガソンでの一件についても言及された同曲。

 

1人の男が死んだ。彼の魂は我々のもとに帰ってくる。我々の中には真実と生命が息づいている。抵抗する意思だってある。だからローザ・パークスはバスで白人専用の座席に座った。だから我々は両手を掲げてファーガソンを行進する。打ちのめされても、我々は前を向く。警官に「下がれ」と言われても、我々は立ち上がる。銃声が鳴って地面に伏せても、カメラは上を向く。キング牧師がたどりついたあの山の頂きを目指して我々は駆け上がる――(歌詞より引用)

 

シンプルなシュプレヒコールでもあり、キング牧師が目指したゴールに人々はまだ辿りつけていないと暗に批判しているようでもあります。

 

 

Prince #BLACKLIVESMATTER at the #grammy‌s

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そして最後に、このムーヴメントの象徴とも言えるPrinceのスピーチをご紹介します。

 

2014年のグラミー授賞式にてプレゼンターを務めたPrinceの口から、こんな言葉が語られました。

 

“Albums still matter. Like Books and Black lives, albums still matter.”

(「アルバムはまだ大切だ。書物や黒人の命と同じように、アルバムは大切なものなんだ」)

 

ダウンロード配信が主流になってきたこの時代にアルバムの存在意義を改めて世に問う素晴らしいスピーチとして、しかも数々の傑作コンセプトアルバムを作ってきた彼が言うからこその重みを伴ものであったということでこのスピーチは大変大きな反響を呼びました。

 

そして、ここまでお読みくださった方ならピンときたかと覆います。

現在軽視されつつあるものとしてアルバムや書物、本と並べて上げられた”Black lives(黒人の命)”というフレーズ。

 

世界中が注目する一大イベントの大事な場面で、Princeは取り繕うことなく自然にこのフレーズを口にしました。

そしてこの言葉に導かれるようにして、同年のグラミー授賞式は先ほどご紹介した”Glory”をはじめとする様々なパフォーマンスの中にブラックパワームーヴメントの強いエネルギーが感じられるものとなり、例年とは異なる空気感に世界中の人々が息を飲みました。

 

 

さていかがだったでしょうか?

 

時代の大きなうねりのまっただ中で自ら声を挙げるアーティストたち。

彼らの勇敢な姿に敬意を表しつつ、今日はここまで!

SOUL iNDEX、また次回~!

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